整復医療における思考論

道筋を立てるための理論

推論における思考形態にも帰納的思考法と演繹的思考法という考え方があります。帰納法とは、因果関係を確定させるための手法です。本来は還元論上で展開され、前提と結論が一定の関係で成り立っているということを条件にして、前提と結論が因果関係の方程式の上にかなりの確率で成り立つという考え方です。これに対して演繹法とは、前提が確定しているということから、結論も確定するという考え方を展開するものです。前提と結論の間には必ず数学的証明のような関係が成り立つという考え方です。物事を考える全てにおいて演繹的な考え方は考察、発想、思考、論理など“物事の理”における『真』の骨格と、その全体像を理解し、かつ把握するに充分な論理を体系付けることができるはずです。

論理的な発想をするために

現実において理論や知識などの方程式を解法するに充分な力がない場合は、演繹的な論理展開が完全な形で出来ない状況が予想されます。それは論理展開をするに充分な理論武装が成されていないからです。このような状況、段階においては演繹的論理の展開は不可能であり、結果的に帰納的論理展開を行なうことになります。

このことは決して間違っているわけではなく、充分な演繹的論理展開が果たせない段階においては、帰納的論理展開せざるを得ないということから考えてもやむをえないことです。つまり演繹的な論理展開が出来ないか、あるいは出来るようになるまでは、演繹的論理と帰納的論理は一体化して行なわなければならないか、若しくは部分的な帰納的論理展開をせざるを得ないことを意味しているのであって、どちらかが正論でどちらかが異論と言うものではないのです。

先入観を捨て洞察を引きだす

現代の物事の考え方は学校教育、家庭環境、社会環境、社会通念、常識論など個人を取り巻く要素あるいは要因が、すべてとは言わないまでも帰納的な考え方に偏っています。帰納論的思考形態は結果検証主義に代表されるものであり、樹木でいえば幹に相当する思考法です。法則を構成するこの考え方は記憶として取り込みやすい反面、記憶を理解と錯覚する要因にもなりかねません。

演繹論的な思考形態は、結果検証された法則を元に理論展開するものであり、樹木でいえば枝葉のように無数に展開し、幹とともに樹木全体を一望理解することが可能な思考法と言えます。これは患者個々人に対応する医療の世界においての意味と同じ意味です。

臨床における真実を明らかにする

臨床においては患者さんの症状(主観的事実)と現時点での状態(現病歴)と過去の経過(既往歴)、さらに第3者行為を含む外傷歴などを把握し、結論に対する直接的な前提(臨床的には原因)を認定する必要があります。

いつ(どの時点で)、なぜ(原因は)、どうして(条件)、どうすれば(状況)、このように(現在の状態)なったのかという論理を脳内で考え(=演繹)、その段階で起こる矛盾に対してさらに考えること(=さらなる演繹)を実行させる。さらに現時点での状態の把握状況と、論理と一致することの帰納法的思考とを一体化させることが必要です。演繹と帰納は推論を完結するための守りと攻め、つまり楯と鉾であると考えるべきです。

演繹的論理および帰納的論理を駆使し、短時間で最大限の情報を論理的に展開し、原因の追究ができるように努力すべきです。これらの考え方が臨床整復医療の理解につながると考えています。

6、臨床整復医学の思考展開論